2009年度 日本質量分析学会同位体比部会報告

同位体比部会長 長尾敬介

 2009年度の質量分析学会同位体比部会研究会は、東京大学・地殻化学実験施設のメンバーの世話で箱根高原ホテルを会場として12月2日(水)から4日(金)まで開催された。77名(一般47名・学生30名:うち質量分析学会員25名)の参加者があり、口頭発表27件とポスター発表31件の研究発表で情報交換や討論が行われた。30名の学生の内訳は、8名が学部4年生、14名が修士課程、8名が博士課程となっており、若い研究者の発表の場として、また広い世代間の交流の場として定着している。質量分析学会員の参加数は、昨年および一昨年の13名に比べてほぼ倍増しており、今後の発展が大いに期待される。
 今年度の特別学術講演は、大阪大学大学院理学研究科物理学専攻・豊田岐聡氏に「マルチターン飛行時間型質量分析計の開発とその応用」のタイトルでお話いただいた。質量分析の基礎から始まり、イオン軌道シミュレーションプログラムTRIOを用いたマルチターンイオン光学系発見のいきさつと実際の開発過程および性能、今後の応用などをわかりやすく解説していただいた。予定時間を大幅に超えた質疑討論があり、非常に好評であった。また、今年度で定年を迎えられる野津憲治氏(東京大学大学院理学系研究科)と田中剛氏(名古屋大学大学院環境学研究科)には特別講演として、ご両人の行われてきた研究の方法や成果を裏話を交えながら話していただいた。
 一般の口頭発表の発表時間は例年通り20または30分間とした。またポスター発表は一件1分間のショートプレゼンテーションと、夕食後の20時から22時半まで2時間半の討論時間をあてて、深夜まで熱心な意見交換がおこなわれた。いずれも一般の学会発表に比べて長めの発表時間で、発表者と聴衆の双方に好評であった。今回初めての試みであった、全発表者を対象とした同位体比部会らしい発表に対する最優秀発表賞は角野浩史さん(東京大学大学院理学系研究科・助教)、口頭発表賞は藤谷渉さん(東京大学大学院理学系研究科・D1)、ポスター発表賞は馬上謙一さん(東京大学大学院理学系研究科・D2)と岡林識起さん(東京工業大学大学院理工学研究科・M1)の2名が受賞した。
 今回の部会開催では、東京大学大学院理学系研究科・地殻化学実験施設のスタッフ・学生の方々にご協力いただいたことを記して感謝する。さらに質量分析学会からの研究会開催補助金は、研究会の充実に大いに役立った。次回(2010年度)の研究会は、京都大学大学院理学研究科地球熱学研究施設の方々のお世話で別府付近で開催されることが承認された。

日時:2009年12月2日(水)から4日(金)(3日間)
場所:箱根高原ホテル(〒250-0522 神奈川県足柄下郡箱根町元箱根164)
プログラム:(PDFファイル参照
参加者:77名(一般47名、学生30名)(参加会員25名)
2009年度開催世話人代表 長尾敬介(東京大学)