第119回関東談話会講演会速報


 去る、7月28日(土)~29日(日)、山梨県の清里において第119回関東談話会講演会が開催されました。参加人数は約40人(石田事務長をはじめ、大学関係者7人、学生10人、民間企業22人)と昨年同様でした(集合写真)。今年は例年にない猛暑でしたが、清里の清涼を満喫しながら初日の午後、山梨大学の清里寮において講演会を、二日目には、清里から車で約5分の川俣川の渓流場でマス釣りとBBQ(BBQ写真、スナップ写真)を楽しみながら交流を深めました。
 講演会は、3件とも山梨大学関係者による講演で、宇宙における分子の誕生から、極低温トンネル反応をを利用した薄膜半導体の形成法、さらにプラスチックエレクトロニクスと、多岐にわたる話題で、質量分析と直接間連しない話もありましたが、普段ではあまり聞けない異分野の話とあり、その内容に興味を抱いた方も多く見受けられて、幹事サイドは安堵致しました。
 講演会は、東京から清里に来る道中で、葡萄狩りをして気勢を上げてこられた方々の到着を待って、スタートしました。最初に山梨大学の非常勤研究員、高橋順子様(現、理化学研究所)により、「宇宙の塵上で作られる水素分子」の講演が行われました。イントロの宇宙の輪廻のところで早くも議論が白熱し初め、MDシミュレーションを駆使した、宇宙塵表面上での水素分子生成反応について説明が終わるころには、ディスカッションを含め約二時間に及ぶ充実した内容でした。最も基本的な分子であるがゆえ皆さん大変活発に質問していました。続いて佐藤(筆者)の講演で、H原子が関与する「極低温トンネル反応:星間分子の合成と薄膜半導体の形成」について紹介しました。極低温(10K)冷却した基板にアセチレンやエチレン薄膜を成膜し、そこに水素原子を照射するとエタンが生成します。反応温度依存性を調べたところ、反応温度が低くなる程その収率が大きくなるという、大変に興味深い現象が見つかりました(科学誌のScienceの"Compass"に掲載されましたが、その謎を明らかにするために現在も実験進行中です)。後半では、この低温における特異な反応を利用し、シラン薄膜とH原子の反応により、アモルファスシリコンを合成する実験について紹介しました。最後に、奥崎秀典様より「導電性高分子を用いたプラスチックエレクトロニクス」の最新の報告がなされました。奥崎氏は昨年の夏から約1年間、導電性高分子の研究で2000年のノーベル化学賞を受けた、アラン・マクダイアミド教授(ペンシルベニア大)の研究室に留学されました。市販のプリンターで回路を描き、導電性の高分子を付着しする方法で作れる、フィルム状のプラスチックトランジスタの開発に関しての講演や、ノーベル賞受賞時の研究室の様子を交えての紹介に、皆さん食い入るように聞いていました。特殊な電流‐抵抗特性や、アプリケーションに関する質問で盛り上がりました。
 講演会が夕食時間にずれ込んだ関係で、少し慌しい夕食となりましたが、その後は懇親会でじっくり親睦を深めました。近くに温泉もあり、4割の方は風呂上りの一杯を楽しまれ、中にはそのまま朝を迎えた方もいらっしゃいました…。
 二日目のマス釣りは、9時過ぎから始まりましたが、朝4時から釣り始めていた平岡先生が棹頭でした。天候にも恵まれて釣果は上々でした。フライで釣られている上級者もいたり、釣りだけの目的で、キャッチ・アンド・リリースされる方もいたり・・・、皆さんそれぞれの釣りを満喫されていました。釣った魚をその場で焼いて食べる味は格別です。マス釣りとBBQ、そしてデザートの山梨の桃で締めくくり、午後3時頃には皆さん帰路に着かれました。遠路より来られる方を考慮しての二日間の日程は、時間的なゆとりがあり好評でした。
 終わりに、幹事の志田先生をはじめ、多くの方を御集め頂いた能美様、BBQの準備に協力していただいた山梨大学の学生さんに感謝します。また、飲み物などを差し入れして下さいました参加者各位にお礼申し上げます。ありがとうございました。

文責  佐藤哲也(山梨大学)

上段左:集合写真
上段右:スナップ
下段左:バーベキュー