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第65回 イオン反応研究会

「生物・直接MSのイオン化とインターフェイス」

日  時:
2015年11月21日(土) 13時~
会  場:
島津製作所関西支社マルチホール(大阪・梅田)  大阪市北区芝田1-1-4 大阪梅田 阪急ターミナルビル14階
JR大阪駅ホーム北側に隣接するビル。阪急17番街のエレベーターで14階へ
主旨:
生命科学研究の分野では最近のMSイオン化やインターフェイスの発達で生物中の代謝物を直接観測でき、MSイメージ画像の取得が可能となっている。直接生物をMSで観測する手法は生物学のみならず、化学や物理学の分野でも注目度が高い。幅広い代謝物全般へのイオン化研究や、測定条件の最適化、組織中でのマトリックス効果の研究など、個々別々の広範な工夫とそれを統合する系統的な研究も必須となっている。今回は一般に知られているいろいろなイオン化法の実例とイオン化メカニズムの討論や生物直接MS観測における工夫などを紹介・議論したい。MALDI-MSイメージング、探針プローブイオン化法(PESI)、脱離エレクトロスプレーイオン化法(DESI)、Direct Analysis in Real Timeイオン化法(DART)などの「イオン化」と生物直接MS観測というキーワードで、応用からイオン化メカニズムまでの最先端の研究を紹介したい。
プログラム:
13:00~13:40
山垣 亮(サントリー生命科学財団)
イオンモビリティーMSによるセサミン類の構造異性体分離

生物中の代謝物をMSで直接観測する場合、クロマトグラフィーによる分離を使うことが出来ないため、質量が全く同じ化合物、構造異性体区別することが出来ない。MS直接観測における大きな課題となっている。我々はこれまでいろいろな化合物の構造異性体の識別を研究しており、特に糖鎖の結合位置の違う化合物や分岐の異なる化合物を行ってきた。代謝物の中には質量が全く同じ化合物が多く含まれており、植物二次代謝物にも多く含まれている。リグナン類のうち、ゴマ種子に含まれるセサミンは分子中央のフロフラン環に3,4-メチレンジオキシフェニル基が左右に結合した形をしていて、2つのメチレンジオキシフェニル基が中央に対しUPかDOWNかで、セサミン、エピセサミン、ジアセサミンの3つの構造異性体を含んでいる。我々は質量分析計のみを利用しこれら3つの構造異性体を識別する目的で、イオンモビリティーMS解析を行った。通常ESI-MSでセサミン類はプロトン付加分子としては不安定であり、イオン化時に脱水反応や脱水素反応が進行して[M - 2H + H]+や[M - H2O + H]+などが観測される。これらの分子に関連するイオン種で3種の構造異性体のイオンモビリティーMSを解析したが、ドリフト時間では構造異性体を分離することができなかった。一方、アルカリ金属付加分子の形ではそれぞれの構造異性体を明瞭に分離することができた。直接生物MS観測における構造異性体識別の工夫の一つとして紹介したい。
13:40~14:40
チェンリーチュイン 先生 (山梨大学)
Lee Chuin Chen (University of Yamanashi)
Ambient mass spectrometry is not necessary equal to ambient ionization mass spectrometry: A brief review on ESI based ion sources operated under vacuum, atmospheric pressure and super-atmospheric pressure.

“Ambient mass spectrometry” analyzes the sample when the specimens of interest are in their native environment, which is mostly atmospheric pressure ambient. This term, which is nearly synonymous with “in-situMS,”first appeared in Science (vol. 311 pp. 1566-1570, 2006) to describe the ambient ionization capability of DESI and DART. Since then, another more refined term, “ambient ionization mass spectrometry” had also appeared in the literature to cover all kinds of atmospheric pressure ion source that can deal with raw samples directly without, or with minimum clean-up or separation step. The ion formation is therefore, by definition, under the ambient pressure. It is our argument that in order to achieve the ambient or in-situ, mass spectrometry, only the sampling process needs to be done under the native ambient environment, the ionization of the sampled material however, can be done separately under vacuum, atmospheric pressure, or even super-atmospheric pressure. Some of these examples will be given.
In this presentation, we will give a brief review, mostly on the electrospray ionization based techniques that have been developed in the University of Yamanashi. It will cover some of the recent progress in the medical diagnosis system based on Hiraoka’s probe electrospray ionization (PESI), and two novel electrospray ion sources that are operated under vacuum, and high pressure condition. We will also highlight some recent work on the ultra-fast digestion mass spectrometry that combines the chemical digestion and online ESI ionization into a single step process that allows the digestion MS (which usually takes several hours or a whole day to complete) to be done in just a few seconds. Hyphenation and interfacing technique using novel vacuum FAIMS will also be briefly discussed.
14:40~15:00
休憩(20分)
15:00~15:40
本山 晃 (資生堂リサーチセンター)
DESI-MSの基礎と応用を語る

DESI (Desorption Electrospray Ionization) は2004年にCooksらにより開発された比較的新しいイオン化法である.DESIの最大の特徴は,試料を溶解させることなく(=固体のままで),通常環境下で(常温・常圧=アンビエント条件下で)質量分析可能にした点にある.試料分子を気相イオンとして取り出す過程はESIと同じであるが,① 試料からの目的分子の抽出,② 気相イオン化,③ 質量分析導入口への移送を同時並行的に(ワンショットで)行う点が画期的であり,同時期に開発されたDARTと共に,DAPCI,LAESI,EESIなど,以降の様々なアンビエントイオン化法の先駆けとなった.本講演では,DESIの基本的な原理・特徴をアーリーアダプターの視点から解説すると共に,質量イメージングへの応用例を文献例も含めて紹介したい.なお,原理や基礎特性の説明は,Prof. Cooksより拝借した資料を使って行う.
15:40~16:20
坂倉 幹始 先生 ((株)エーエムアール(AMR))
DART-MSを利用した植物の代謝・放出の測定系の開発

植物の活動の質量分析を用いた観測技術にプロトン移動反応質量分析(proton transfer reaction (PTR) MS)が挙げられる。PTR-MSでは低圧下で選択的に生成させたH3O+を試薬ガスとして反応させるため、反応選択性が高く、また高感度分析が行える特長を持つ。一方、今回手法として取り上げるDARTイオン化法は、主なイオン化試薬はH3O+クラスターイオンとプロトン授受における精密な検討ができない点、大気圧でイオン化を行うため大気由来の副次反応等がPTR-MSに比べ起きる点、感度がPTR-MSに比べ低い等の問題点がある。
しかしながらDART目的に合わせて搭載する質量分析計を変えることができるため、Pos/Neg同時測定やMS/MS分析等PTR-MSではできない分析手法を用いることができる。今回は植物の環境変動への応答(代謝・放出)をDART-MSでの分析計について検討した。植物をガラス鐘にいれ、ポンプによってエアーを循環させ、出口部分をDARTイオン源に接続する。このとき光量等を変更させるなど植物に対しストレスを与え、放出された成分をDARTイオン源でイオン化し、測定を行った。主としてテルペノイド類が確認でき、モノテルペンが特徴的に観測された。モノテルペンは分子量が同じであるものが多く、またPTR-MSにおいてもモノテルペンの測定は困難であることが知られている[1]。
ここではPos/Neg同時測定やMS/MS分析を利用した各テルペンに特長的なシグナルを抽出し、多成分同時測定のアプリケーションのひとつとして紹介する。
[1] Anita Leeetal., JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH, 111, 2006, D17305.
16:20~17:00
名越 慶士郎 先生 (横浜市立大)
MALDI MSによるタンパク質の直接分析に対して試料形態やマトリックスが与える影響

タンパク質の機能解析を行うプロテオミクス研究では、タンパク質の同定、アミノ酸配列解析、修飾官能基の同定などに対する分析・解析が必要とされる。さらに、分析されるタンパク質の試料形態は、精製・分離されたものや、生体試料中に含まれているもの、などさまざまである。近年、アンビエントイオン化や脱離イオン化を用いた生体試料の直接分析が注目されている。特に、欠かせないツールの一つになっているMALDI MS法は、迅速かつ高感度にタンパク質を同定することが可能な手法として、医・薬学や生化学など多くの分野で利用されている。質量分析を用いた直接分析は、試料調製を最低限に抑えることが特徴であり、厳密な構造解析には向かないが、既知分子の迅速なスクリーニングやデータベースを利用した生物種の同定プロファイリングなどに応用されている。また、得られる結果は、選択するマトリックスや試料調製法に影響される。
本発表では、生物試料に含まれるタンパク質の直接分析に焦点を当て、MALDI MS分析におけるデータ取得に対する影響を、タンパク質が存在する試料形態と試料調製法の観点から紹介する
参加申込み:
参加希望の方は、 (1)氏名、(2)所属、(3)メールアドレス、(4)会員/非会員の別を添えて、
下記メールアドレスにお申し込みください。
 ion15_%_mssj.jp (送信の際は、_%_を@に変えてください)
参加費:
無 料
講演会終了後、簡単な懇親会を予定しております。懇親会に参加される方は当日会場にてお志を集めさせていただきます。
幹事:
山垣 亮 (サントリー生科財団)(第65回担当幹事)、菅井俊樹(東邦大)、名越慶士郎(横浜市立大学)、笠間健(東京医科歯科大)、チェンリーチュイン(山梨大学)、早川滋雄(大阪府立大)、竹内孝江(奈良女子大学)、本山晃((株)資生堂)(部会長)